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健康情報広場

2011-09-29
鼠径(そけい)ヘルニアになる原因
担当医:帝京大学医学部名誉教授 冲永功太先生
 どうして鼠径ヘルニアになるのでしょうか?ここでは一般的に考えられていることを紹介いたします。
子供のヘルニアとおとな(成人)のヘルニアとはかなり違います。
1.子供のヘルニア
子供のヘルニアは生まれつきの病気です。胎児が胎内にいる頃精巣はお腹から陰嚢内まで移動しますが、それに伴って腹膜(お腹の内側全体をおおっている薄い膜)が内鼠径輪を通って陰嚢内まで降りてくるとされています。内鼠径輪というのは、全ての人にある鼠径部の筋肉の穴で、男性ではこの穴を精索が通って睾丸まで行き、女性では子宮円索が通っています。この腹膜のとびでた部分は正常には閉じて、お腹の中とは通じなくなるのですが、ヘルニアの子供ではこれが閉じずに開いている状態、つまり腹膜の一部が袋状にとびでた状態(ヘルニア嚢)にあります。この袋状の腹膜の中に腸が入り込んだ状態がヘルニアで、間接(外)鼠径ヘルニアと呼ばれます。この腹膜のとびだした状態が全てヘルニアとなるのではありませんが、多くはヘルニアとなるとされています。しかし、なぜある人はこの腹膜が閉じてしまうのに、ある人では開いたままの状態なのかについての原因は分かっていません。一般には約半分くらいの子供にはこの腹膜のとびだした状態はあるとされています。また、この腹膜のとびでた状態はあるのに、一生、ヘルニアとして症状がでないまま過ぎてしまうこともあるとされています。
2.おとな(成人)のヘルニア
成人といっても30~40歳代の比較的若い世代と、70歳以上の高齢者とでは少し違うようです。若い世代のヘルニアはほとんど子供と同じ間接(外)鼠径ヘルニアで、なんらかの原因で正常な内鼠径輪が広がった状態です。このタイプでは基本的には子供のヘルニアと同じように、腹膜がとびでた状態(ヘルニア嚢)が残っています。日常の動作の中で普通の人以上にお腹に圧のかかる状況がある人に起こりやすいといえます。その中には運動選手、重いものを持ち上げる仕事をしている人などです。しかし、普段重いものを持つような仕事をしていてもヘルニアになる人とそうでない人がいるのですから、やはり生まれつきこの内鼠径輪が広がりやすい解剖となっているひとがいるためではないかと思います。
 
高齢者の場合には若い人と違って、筋肉が衰えて弱くなっているためと思われる例が多いようです。その結果内鼠径輪の周囲の筋肉が弱くなり内鼠径輪が広がり、間接(外)鼠径ヘルニアとして脱出してくることとなります。また、高齢者の中には別なタイプのヘルニアがあり、直接(内)鼠径ヘルニアと呼ばれます。内鼠径輪からでた精索が通る道を鼠径管と言いますが、その裏側(後壁)にはもともと筋肉のない部分があります。この部分からヘルニアが脱出してくると直接(内)ヘルニアが起こります。もともと鼠径管の後壁は、腹膜の他に横筋筋膜という筋肉とは異なる膜があります。これは正常な人の場合には、ある程度その中に繊維成分がありそれなりの強さを持っているのに対して、直接(内)鼠径ヘルニアの人の場合には全く弱くなっているのが原因と考えられています。
 
このように子供の場合、あるいはおとな(成人)でもかなりは生まれつきの要素がありますので、ヘルニアにならないようには注意のしようがないと言えましょう。
 
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