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健康情報広場

2012-02-21
学長室の窓から(4)
杏林大学学長 跡見裕
 ある土曜日の夜でした。妻は外国に行っており、1人で夕食をとらねばなりません。冷蔵庫の中に用意してある食事を温め、それとともに缶ビールを飲むことにしました。そばには足の不自由なコーギーがうずくまっています。
 少しすると何となく調子がおかしいのです。時々“どくん”と心臓が拍動します。自分で脈をとってみるとたまに脈が欠けますが、それ以外は規則的な拍動でした。不整脈だがまぁ大したことはないだろうと、食事を終え本を読み始めました。しーんとした部屋の中にいると、“どくん”とする頻度が増えてくるような気がしました。実際、脈をとると欠ける回数も増えています。それでも読書を続けていましたが、10時頃になると不安感が増大してきました。“動けない老犬にみとられ老人孤独死”などと、新聞の見出しも浮かんできます。どうしようかと考えたのですが、とりあえず心電図でもとってもらおうかと勤務先の病院に行くことにしました。
 病院に着くと当時の部下である外科の当直を呼び出し、心電図をお願いしました。1・2次救急外来へ向うと、救急手術を終えた医師達が待っていてくれましたが、なぜか皆嬉しそうな顔をしています。救急外来は丁度、患者さんが途切れたところで、早速循環器科の医師が診てくれました。採血、胸部X線写真、心電図をすませ、ベッドで心電図モニター、動脈血酸素飽和度モニターを装着し、点滴も始まりました。心房性の期外収縮だとのことで、私の診断と同じですが、専門家がいうとやはり安心感が違います。
 そうこうしていると、自覚症状も落ち着き、モニターをみても、脈拍の欠ける度合いが少なくなってきました。そうなると早く帰宅したくなります。今後の検査の話などを聞き帰ろうとすると、もう少しですから待ってくださいなどといい、なかなか帰宅許可を出しません。その内真夜中の12時を過ぎました。皆がベッドのそばにやってきて、“お誕生日おめでとうございます”というのです。そう日曜日は私の誕生日でした。
 医療政策を考えると、①医療の質 ②受診し易さ ③かかる費用 が問題となります。この3つを満足させることが難しいのはよく理解できます。①、②を満たすと③が増大します。①と②も両立させることはそれほど容易ではありませんが、日本の国民皆保険制度は、少なくとも比較的安い費用で、高い質の医療を、誰もがいつでも何処でもうけることができるようになっています。この制度は完全なものではありませんが、外国からは医療のあるべき姿と評価されているのも事実です。
 医師である私も、夜の不整脈が不安となり、検査を受けようと外来に行きました。その時、いつでも受診できることのありがたさを実感しました。
 
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