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健康情報広場

2011-10-12
学長室の窓から(3)
杏林大学学長 跡見裕
 私は消化器外科医として、40年間働いてきましたが、この間に消化器外科領域での治療法も本当に変わってきました。例えば、胆嚢に石がある胆石症の方は、お腹を開いて胆嚢をとることが殆どでした。やがて体の外から衝撃波を石に当てて砕き、細かくなった石が自然と体外に排出されるという方法が考案されました。これは良さそうでしたが、細かく割れる胆石の種類が少ないことや、一旦無くなった石がまたできてしまうこと(再発)が多いのも問題でした。
そうこうしているうちに、お腹に小さな穴を開けそこから内視鏡をいれてお腹の中を直接のぞき、別の小さな穴から入れた器具を使って胆嚢を取り出す手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)が開発されました。実際、従来のお腹をあける方法でも、かなり小さな傷で胆嚢をとることができます。最初に腹腔鏡下胆嚢摘出術が発表されたとき、なぜこんな事をするのだろうと多くの外科医は思ったものです。ニューヨークタイムズにも、“最近こんな危険な手術がはびこっている”との記事も出ました。
しかし、腹腔鏡下胆嚢摘出術はあっという間に世界中にひろがり、いまでは胆嚢をとる場合の標準的な方法となっています。もちろん、安全な手術法とするための努力がしっかりとされてきたことも大きな要因です。しかし一番大きいのは、患者さん側からの要求でした。胆嚢を取らなければければならないなら、より痛みの少ない体に負担の少ない方法を選びたいという、きわめて当然の要望でした。かつて外科医は”The big surgeon, the big incision”との教えを受けてきました。これは“偉大な外科医は大きな手術創で手術をする”との意味です。小さな傷で無理な手術をしてはいけないという教えなのですが、患者さんからみると何となく外科医の思い上がりも感じさせる言葉でしょう。
インフォームドコンセントでも述べましたように、手術もやはり主役は患者さんなのですから。
 
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