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健康情報広場

2010-11-01
学長室の窓から(1)
杏林大学学長 跡見裕

レイモンドチャンドラーは探偵フィリップマルローにこういわせています。
“タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。”
私の好きな言葉ですが、結婚式の媒酌人をつとめたときにこれを紹介したら、会場がしーんとなりました。探偵の言葉は結婚式の挨拶にはふさわしくないようです。

かって、医療現場ではパターナリズムが主流でした。パターナリズムとは父親の権威をもとにした親権主義(父権主義)のことで、医師が父親、患者さんが子と いうようなものです(今、父親の権威がそれほどあるとは思われませんが)。父と子供のような愛情関係は必ずしも悪いものではなく、ヒポクラテスの時代から このような考えが、綿々と受け継がれてきました。

しかし、パターナリズムは上下関係を伴いやすく、時に患者さんが従の立場になることが少なくありませんでした。医療の現場で中心にあるべきは、当然患者さんなのです。
個々の患者さんの病気に対し、どのような診療が最適なのか。これは医療の中できわめて重要なことであり、これこそ患者さんと医療従事者との共同作業なのです。その基本的なものに説明と同意(informed consent),説明と決定(informed decision)があります。患者さんと医療従事者が、正しく情報を共有して治療方針を決定することが診療の第一歩です。

この説明と同意は共同作業であることを、十分に認識していただきたいものです。
病に対してはタフにともに立ち向かうべきですし、お互いには優しく接すること、これが医療の本質ではないでしょうか。

 
 
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