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健康百話

2011-11-25
長廻雑記帖(32)アルツハイマー病
長廻 紘
 わたしたちは常に肉体も精神も自己のコントロール下に置きたく思っている。
認知症ではそれが適わなくなる。考えただけでも身の毛のよだつ事態である。介護を担当し身近に経験する多くの人たちは、自分だけは何としてでも逃れたいと思う。認知症の多くの部分を占めるアルツハイマー病は、直ぐにも生命を脅かすことはないが、音もなく忍び寄り着実に進行する。考えようによっては癌よりも恐ろしい病気である。その初期症状と物忘れなどの生理的な加齢変化の境界が明瞭でないため、外見だけからの早期診断は難しい面がある。進行した中期症状は、時間や場所の見当識障害、抽象的なことが分からなくなる、物忘れがひどくなるなどのほかに、妄想、幻覚、徘徊など本症に特徴的な症状が目立つようになる。さらに進むといわゆる恍惚状態である。認知症は家族にとっても大問題で、無知に基づく無用のいさかいなどもある。診断がつけば家族間の軋轢もへる。家族が落ち着けば患者も落ち着くことが多い。
 高齢者に一定の確率で発症するのでアルツハイマー病は今後増え続けるであろう。65歳以上の10%弱が85才以上の30%弱がかかるといわれ、10年後の2020年には300万人近くが罹病すると予測されている。ただその後の研究の進展により、早期発見・早期治療によって病勢の進行を遅らせる、症例によっては治療薬が奏功するなどといったこともあることが知られてきた。

 20世紀初頭、51才の夫人が夫に対する嫉妬妄想、記憶障害や見当識障害(自分がどこに居るか分からない)などで精神病院に入院し、5年後に亡くなった。彼女を病理解剖したのがアルツハイマーで、彼は多くの脳神経細胞が死滅して数が減っている、異常物質が蓄積していることなどを認めた。これがアルツハイマー病の最初の学術的な報告である。
 アルツハイマー病は原因が不明であるうえに、早期診断が難しい。予知できればそれなりに対処(遺言を記すなど)できるが、罹ってしまってからでは遅い。現代の多くの難病と同じようにアルツハイマー病の原因は一つではなく多くの原因が複合的に作用して発症すると考えられている。危険因子として考えられているものは加齢がまず挙げられる。これは死亡の多くの原因は加齢であるというのと同じことであるが、高齢であるほど起こりやすいのは疑いない。また女性に多いが、高齢者に女性が多いからだけでなく年齢別に見ても男性より女性に多い。そのほかには不活発な生活が関係しているとする調査結果が多い。これは脳の廃用症候群のようなものかもしれない。生活環境の大きな変化、たとえば配偶者の死亡や重病、定年退職、転居、破産などをきっかけに発症ないし顕症化することがある。神経毒として知られるアルミニウムが関与したと推定される症例も少なからず報告されている。
 
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