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健康百話

2011-08-29
長廻雑記帖(26)老年症候群
長廻 紘
 年を取ると、次のような短所が生じやすくなる。肉体的には、1.背中が曲がり全体的にこじんまりする。2.肌に艶がなく、声に張りが眼に輝きがない。3.動作が必要以上に緩慢。4.汚い。鼻汁よだれ等。精神的には、1.卑屈で僻みっぽい。2.自信が無い。3.頑固。黙っているか言い訳をする。4.周囲に無関心。など。挙げてゆけばキリがないが、挙げるのが目的ではない。ポイントは背曲がりに特徴的なようにみすぼらしい事。小便をしている後姿が見るに耐えない老人が居る。肉体的、精神的にこじんまりして覇気が感じられない。放っておいても身長は10年で1cm縮むから、意識的に背を伸ばすのはとても重要。
 年をとれば身体を動かすことがだんだん億劫になってくる。為ないですむことは為なくなる。精神の不活性化と両々あいまって、生活の諸方面に不具合が生じてくる。周囲の者が気づいて指導しなければ釣瓶落しに衰えてゆく。それを老年症候群あるいは生活不活発病という。昔はあまり聞かなかったが、老人が増えて目立つようになったせいであろう、よく耳にする。年よりは甘やかさずにどんどん仕事を与えるべきである。廃用症候群というのもある。使わなくなると身体各部が衰えることをいう。老人は転びやすい。転んだら脆くなっている骨が折れる。入院したりして暫く歩かないでいると骨はついても、寝ていて使わなかった足の筋肉が萎縮してしまって立てなくなる。そのまま寝たきりになる。なにごとでも一旦悪循環に入ってしまうと容易に抜け出せないが、老人の場合はひどい。なってからでは遅いので元気なうちに動くことの重要性を自分の身体に叩き込んでおかなければならない。

 老年が惨めなものと思われる理由としてキケローは次の四つを挙げて、それぞれに惨めではないと反論を加えている。老年は1.公の活動から遠ざける。2.肉体を弱くする。3.ほとんど全ての快楽を奪い去る。4.死から遠く離れていない『老年について(岩波文庫)』。老年が惨めなものと思われるのは主観の問題で、老いが与える深い知恵は惨めさと思われているものを逆転させうる。
 「待ってました。老年」。人がどちらかといえば若い時に力が出せる、輝くタイプばかりではない。年を取ってからの方が生き生きとしている者もいる。「少(わか)くして学べば壮にして為すあり。壮にして学べば老いて衰へず。老いて学べば死して朽ちず(佐藤一斎)」。人生の目標は、己を信じられるようになること。それには、ものごとの裏にある真相を自己の真実を常に問いつづけることである。学ぶことによって普遍性を持つに至った己が信ずることのできる己は強い。釈迦曰く「汝自らを灯火とし、他を拠りどころとするなかれ」。若い時も老年も両方生き生きも、両方惨めももちろん居る。
 
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