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健康百話

2018-05-14
健康百話(90)骨粗しょう症 人口と社会
長廻 紘

 超大国・ソ連で人口が減り始め乳児死亡率の上昇と相まって、ソ連邦の崩壊を、それが実現するはるか前にフランスの人口学者E.トッド予測したのは有名である。ある社会を判断する最も基本的な要素が人口だからである。人口減少は端的にその社会の衰退を意味するからである。人口は色々な要素の集合としてましたり減ったりする。2015年、米国の人口動態データによると、45~54歳の白人の死亡率が上昇していて、それは自殺、麻薬、肥満などの増加によるとされる。人々が不安に苛まれ、生きてゆく不安に耐えられなくなっているからだという。色々な原因が複合して起こるけれども、人口の減少はその社会にとどめを刺す最後の一刺しといわれている。こういった、ある社会層を覆う不安が2016年アメリカ大統領選挙においてトランプという異色の候補を当選させたという。
物質的繁栄を極めた古代ローマ帝国において繁栄に満足できない人々が次第に増えていった。かれらの心にうったえたキリスト教が弾圧に耐えながらやがて国教にまでなっていったことに、物質だけでは済まない人間というものがよく表れている。ローマ帝国が偉大であったのは、軍事力や道路・水道網にみられるような高度な土木技術に限らず、征服した諸民族を寛大に迎え入れ、かつては弾圧したキリスト教を受容した懐の深さによるところが大きい。余裕を失って市民にパンとサーカスを与えられなくなった。食わせられなくなったことが大ローマ帝国を蛮族の侵攻を前にして後退を続け、なすすべもなく滅んでいった根本的な原因といわれている。
人間を支えているのは言うまでもなく骨、骨格。人体で骨がおかしくなる、スカスカになるのは社会で人口が減るようなもの。活力がなくなる。いまの日本がよい例である。硬い骨がボロボロになれば体を支えられなくなる。骨粗しょう症という。骨は硬くて丈夫そうに見えるが、やはり新陳代謝を繰り返している。古い骨が壊される骨吸収と新しい骨が作られる骨形成によって一定の形と硬さを保っている。吸収と形成を骨の代謝回転・リモデリングという。骨粗鬆症はリモデリングのバランスが崩れた状態で、骨吸収のスピードが形成のそれを上回り、骨を構成する成分が減って骨密度が低下した状態である。それに骨の質(骨質)の低下も加わり骨折しやすくなったのが骨粗しょう症である。新生児数より死亡数が多いようなものである。国勢調査ですぐわかる人口と違い、骨は外から見ることはできないから、転んで簡単に骨折してしまうまで気づかれにくい。高齢者は骨粗しょう症の候補者という目で見るべきである。
 こういった骨の変化に最も関係が深いのが加齢であるが女性の場合には閉経の影響も大きい。喫煙、アルコール摂取(日本酒換算3号以上)、糖尿病、動脈硬化症、低体格指数(BMI)なども骨質の劣化に影響を及ぼす。症状は体つきの変化である猫背(円背)や身長低下。高齢者の脊椎骨折では6割以上が慢性的な経過で変形が進行する。高齢者の腰痛の少なからぬ部分が本症による。転倒すると四肢の骨折をきたしやすい。

 
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