HOME > フクシ情報広場

健康百話

2018-02-20
健康百話(88)潰瘍性大腸炎とクローン病
長廻 紘

 腸は口に近いほうを小腸、肛門に近いほうを大腸といい、前者は細くて長い、後者は太くて短い管です。小腸は消化吸収の主座で特に吸収のほとんどが行われています。小腸表面は絨毛という皺状の構造で、伸ばすと畳8畳敷ほどもの広さになり、吸収を効果的に行えるようになっています。
腸管の病気は戦前までは急性に経過する感染性腸炎が主なものでしたが、最近では原因不明の慢性炎症と大腸がんが主なものです。時代や環境が変わるにつれて病気も変わります。病気に関していえば食事の変化が一番大きな要因ですが、それともちろん環境とくに衛生環境です。腸では主流であった赤痢、コレラ、サルモネラ腸炎あるいは食中毒など急性の感染性腸炎の多くは主として環境整備によって克服されるか対策が立てうるようになり減りました。それに代わってかつては日本に存在しないといわれてきた難治性で慢性の潰瘍性大腸炎やクローン病が増えています。 
潰瘍性大腸炎は若い人に多い病気で、好発年齢は10代後半から20代にかけてで、下血、下痢、腹痛を主症状とし、発熱や倦怠感といった全身症状をともないます。大腸の全体を侵す重症なものから直腸にほぼ限局した軽いものまで様々で、下痢と下血などの局所症状と発熱や倦怠感を主症状とします。治ってもまた再燃を繰り返す極めて難治性の疾患で、長期経過例では大腸癌、しかも診断が難しく難治性である癌の合併がみられます。総理大臣が罹ったことによって有名になった病気ですが、筆者が若かった頃は日本に珍しい病気で外国の文献によって学んでいたことを思い出します。それが半世紀のうちにありふれた病気になり驚いています。
クローン病も同じく若い人に多い炎症性疾患で、潰瘍性大腸炎がほぼ大腸に限局した疾患であったのに対し、大腸とともに小腸も高頻度に侵されます。消化管症状は腹痛、下痢が主で下血はさほど目立ちません。全身症状は体重減少、発熱が主なものである。腸管外合併症として貧血、口内アフタ、関節炎、皮膚症状や虹彩炎などの眼症状が知られています。これもアメリカの大統領アイゼンハワーが病んで知られるようになった腸の炎症性疾患で50年前は潰瘍性大腸炎に比べても数少ないもので、日本に本当にあるのかと真顔で議論していたことを懐かしく思い出します。
腸の病気の症状は下血と下痢。とくに下血は癌などの器質性疾患によることが多いので必ず原因を究めなければならなりません。腸は非常に長い管であるが、長さや面積において大部分を占める小腸に癌は少なく、大腸に多くみられます。小腸では吸収が行われるので大腸での発癌物質の濃度が濃くなる、内容物の流れが速いので発癌物質との接触時間が小腸では短い、などといったことが大小腸のがん発生率の差であるという説があります。さらに脳、心臓など重要な臓器には癌が少ないように栄養吸収という生に必須な働きを行う小腸に癌が少ないという多分に希望観測的な意見もあります。
腸の病気という場合、過敏性腸症候群を忘れることはできません。これは腸に器質的な変化がない一種の機能性疾患です。診断するうえでの客観的な指標がなく症状から定義されます。それは次のようなものです。「過去3か月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、次の項目のうち2つ以上がある。排便によって軽快する。発症時に排便頻度に変化がある。発症時に便の形に変化がある」。分かりやすい例は何かをしようとすると便意を催し我慢できず、電車に乗ったら一駅ごとに降りて排便をする、など。本症はしばしばストレスによる症状増悪がみられ、また不安障害、パニック障害、うつ状態などの精神心理障害を起こすことがある。過敏性腸症候群はありふれた病気で消化器内科を訪れる患者の30%に上記基準を満たすという報告がある。

 
バックナンバー
健康情報広場
健康百話
広報
▲このページの先頭へ