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健康百話

2018-02-20
健康百話(86)病気を治す――免疫
長廻 紘

 男は家を出れば7人の敵がある。目の前にいて攻めてくるものだけが敵ではない。眼に見える敵は強敵ではない。眼に見えない処にこそ敵しかも強敵はいる。その敵を察知して戦うからこそ男は(もちろん女も)生きて行ける。見えない敵と戦っているのが免疫の働きである。われわれは見たいものだけを見る、見たいものしか見えないという大きな欠点を持っている。敵を見ることができなければ闘いは常に負け戦に決まっている。見えるものだけを相手にしていれば遠からず滅びる。見えない敵を見つけ闘ってくれているのが免疫の働きである。見えていないと思って油断しているだろう敵を見つけ、正面からではなくからめ手から対抗してゆくのは勇者の道ではないが賢者の道である。
何かを抵抗なくできるようになることを何々に免疫ができたという。そのように、免疫は今では日常語になっているが、もともとは医学の術語である。その概念は病気から身体を守る防御システムであり、外から体内に侵入した異物を自分でない(非自己)と認識し速やかにこれと反応し、無害化する生体防御のことを免疫という。ジェンナーが牛痘から造った病苗を人体に接種して天然痘の予防としたことから始まった、牛痘種痘法(1796年)という。
前項で述べたように、難敵である癌とでさえも免疫の登場によって、人間もようやく対等に戦える目処がついてきた。癌は恐ろしい敵であるからまともに戦ったらたとえ勝っても、減損治癒で述べたように宿主も甚大な被害をこうむる。免疫のようなソフトパワーで対抗するのが犠牲の少ない理想的な方法といえる。癌の謎が解明されると(免疫チェックポイントなど)、それを手がかりに癌に効く薬をつくることができる。
免疫は白血球に分類される一群の細胞(血球)であるマクロファージとリンパ球のT細胞とB細胞によって行われる。マクロファージは貪食、殺菌機能を持ち自然免疫に与かる。T細胞は異物である抗原を認識すると増殖して活性化因子(インターロイキン)を分泌してB細胞を刺激する。それによってB細胞(抗体産生細胞)は分裂を繰り返し、その抗原に対する抗体をつくり体内に入ったタンパク質である異物と特異的な反応(抗原抗体反応)を起こして異物を排除する。リンパ球は微生物感染などに際して微生物に対する抗体を産生する。あるいは微生物感染細胞を殺すキラーT細胞となり微生物を排除する。このように働く。リンパ球機能を欠く免疫不全症では感染症に対する抵抗性が著明に減弱するので、リンパ球が司る免疫応答である獲得免疫応答は病原微生物防御において不可欠である。エイズが怖いのは後天的に免疫機能が侵されるからである。 
いろいろな理由で栄養が不十分であると生命活動全般が上手くゆかなくなり身体のさまざまな機能に支障が生じる。免疫は自然に備わっているものであるが、栄養不十分の一環として免疫力が低下する。高齢者で噛む力が弱ってくると免疫力低下は起こりやすく、若い人では何でもないことが重大なことにつながる。たとえば、誤嚥は若い健康な人にも起こるがあまり問題はないが高齢者では重篤な肺炎につながる。進行癌で体力が衰えた人では免疫力も低下しているので多くの場合の死因は感染症である。

 
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