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健康百話

2017-11-20
健康百話(81)消化管の癌――病気は変わる
長廻 紘

 ものごとは変わってゆく。病気も変わる。かつて、すぐ死ぬからコロリといわれた恐れられたコレラ、梅毒や結核など感染性の疾患は激減し、もはや過去の病気とされ、あってもどこか他所のことといった感じである。それにとって代わって現代の病気といえば、寿命が延びて長く生きた末にかかる癌も含めた生活習慣病である。生活した付けである生活習慣病が長寿社会で増えるのはある意味当然である。
病気がなぜ変わるかというと病気自身が変わるという面と人間の対抗手段が変わる、進歩するという面とがある。インフルエンザに代表されるようにウイルス性疾患では遺伝子が少し変わることによって、別の顔をしてあらわれてくる。エイズもそうである。梅毒は病気としての力が弱くなって鼻が落ちるといった激烈な症状は見られなくなっている、というか原因微生物が人間との共存を選んだように見える。南米のインカやアステカのような大帝国が少数のスペイン人に征服されたのは、そこには存在しなかった病原菌が持ち込まれたせいでインカ人がバタバタ死んでいったからという説が強い。
人間の側の対抗手段という意味では医学の進歩一般に帰することができ、検査法や治療法は技術全般の進歩とともに面目を一新している。この検査法と治療法の変化が癌も大きく変えた。癌はますます増えているがその内容は様変わりしている。3~40年前までは日本で癌といえば胃癌が真っ先に頭に浮かんだし、実際、癌も癌死も多くは胃癌であった。それが今や胃癌はその他大勢のうちの一つであり、大腸、肺、前立腺や乳房の癌と同じ程度の発生頻度になっている。死を連想させるという意味では胃癌ではなく膵臓癌が随一である。
消化管の癌であるが、今や発見も治療も容易な部類の癌になっている。消化管がその名の通り管であるので内視鏡によって容易に発見でき、小さければ内視鏡で取る(治療する)ことができる。胃癌が国民病というほど恐れられたのは体外から触れるほど大きくならなければ発見できなかったからである。癌は上皮性悪性腫瘍と定義されるように上皮にできる。上皮とは消化管では一番内側で食物や内視鏡が通る粘膜表面のことである。消化管は表・内側(食べ物や内視鏡が通る側)から外である腹腔側へ向かって粘膜、筋肉、漿膜の順で層がある。したがってどんな小さながんでも一番内側にできるので内視鏡で簡単に見つけうる。
食道では食べた内容物はまだあまり変化を受けていないので癌は少ないと考えられ易いが、アルコールを飲んで顔が赤くなる人は食道がんが生じやすく要注意である。胃癌もピロリ菌が原因として働いていることが分かってきて、除菌が癌予防に効果的といわれます。大腸は人体のうちでも癌の好発部位として知られてきています。小腸は吸収という生命に必須な部位なので癌は少ない。心臓や脳といった重要な臓器に癌は少ない、おなじように重要な小腸にも癌は少ないという説もあるが、癌の発生はそんなことで決まるのではないだろう。その証拠に肺には癌が多いし、生命に直接関与しない手足に癌は少ない。癌は偶々生きている時代の環境と生活の組み合わせで決まるものである。

 
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