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健康百話

2017-07-07
健康百話(74)進化論から見た病気とは何か
長廻 紘

 ものごとには目に見える直近の(表面的な)原因と見えない奥深い真の原因とがある。転ぶのは物に躓くという直近の原因と立って歩くという根本的な原因とがある。死ぬのは病気が直近で、生きていることが真の原因である。
数百万年のあいだアフリカの大草原において小集団で動き回っていて、その後世界中に広がったというのが現在の人類である。人体構造は変わりにくく、生活や環境は短期間に変わりうる。何十万年も前にできあがった人間の身体の構造(現在でも基本的には同じ)と、最近生じた生活・環境面の変化(石器時代とすら甚だしく違っている)との間の著しいギャップに病気の奥深い原因を求めることができる。現代人の身体は石器時代の人と基本的に同じである。当時は一日中動き回って狩猟採集によってかろうじて栄養分を確保できていた。たまに生じた余分なカロリーは脂肪として蓄えていた。その後人類は道具を使うことと農耕牧畜によって、周囲の環境を急激に変え、さほど労せずに好きなものを好きなだけ食べることができるようになった。古いままの身体と変わった環境の間の差は著しく、この差(ミスマッチ)が様々な現代病を生み出している。ざっと挙げただけでも腰痛、転倒・骨折、肥満、糖尿病、高血圧、癌、認知症そしてうつ病もひょっとしてそうではなかろうか。
人間という動物がどのような経過(進化)を経てできあがり、遺伝子がどのようにそれに対応できているか、できていないかを考えることによって病気の秘密が分かってくる。人間の身体は誰かが熟慮して考え出した設計図に基づいてできたものではありません。自然淘汰を繰り返して、場当たり的にできたものである。当然、身体のすべてが現代人の生活に対応できるようにはできていない。現代の生活に身体がマッチするにはおそらく何万年もかかることでしょう。古いまま現代に至っている身体は新しい環境と無理な妥協を繰り返しながら機能しているが、そこには当然無理がありいろいろな病気につながる。
 人間はそれぞれの器官に負荷を与え続けていないとその器官が弱ってくるものです。歩かないとやがて立てなくなる。頭を使わないと頭は働いてくれなくなる。認知症は生活習慣病だから身体や頭を精一杯使って生きてゆかなければなってしまう病気。人間の身体を畑にたとえると、認知症は耕作放棄地のように耕さないで畑が荒れ果てた状態といえる。丁寧に耕し続けられた畑と放置された畑の差が病気となって表れる。アルツハイマー病は脳の中でずっと最近になって進化した部位の異常で、獣などはもちろん猿などの他の霊長類にも起こらない、という説があります。
食物が少なかった時(石器時代以前)に、人類の先祖たちはせっせと栄養を脂肪にして溜め込むというのが飢饉などの食糧不足のときに生き延びる術であった。それが楽に高栄養を得ることができる時代になるとその遺伝子は逆の働きになる、すなわち必要以上に内臓脂肪がたまる方向に遺伝子が働いてしまうというのがメタボ。糖尿病は血中からグルコースを運ぶ作業にインスリン産生臓器である膵臓が草臥れてしまって起こる病気。日本人はインスリン産出能が低く、高カロリー時代には糖尿病になりやすい。

 
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