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健康百話

2017-07-07
健康百話(73)セックスと健康
長廻 紘

 妻に先立たれた男性は5年以内に死ぬという、かなり広く流布している説がある。そのような環境に20年近く生きている筆者には妄説としか言いようがないが、高齢やもめの締まりない日常を目にすれば上記の妄言のように言いたい人がいてもおかしくはない。
 人間の最も重要な行動のうちには性生活がある。それにはいろいろな種類があるようであり軽々しく扱えないが、ここでは普通の男女間の性的接触に限局して考えます。その中心となるのが性交・セックスである。 ものごとには個人差が大きく性生活はその差が大きなものの代表である。常識として一般に認められている性的欲望とは、成人の生活の中に普遍的にあるものであり、その欠如(無・性愛)は正常というよりどちらかといえば異常のほうに分類される。
最近ではどの程度信憑性があるかは別にして一生独身にして無性愛的生活を送っている男女が少なくないという。性的欲望は思春期とともに兆し、だんだん強まりやがて衰弱してゆくものであるが、消失することはない。人は何歳ぐらいまで性欲があり何歳ぐらいまで行為が可能かは個人差が大きい。
性欲の持続と健康の関係はいかなるものであろうか。20世紀末の調査であるが健康な8000人の男女を対象にした調査によると、60代前半では男性88%、女性65%が月一回以上のセックスを行っているという。60代後半ではそれぞれ80と55%。70代前半出72対43%。70代後半で55対30%となっている。勃起しない膣が潤わなくて痛いなどの高齢者にありがちな障害を乗り越えて皆さん健闘なさっている。
 性生活は子孫を残すほかに欲望の充足、生活の活性化、情緒安定、癒しなどといったポジティブな価値を有するとともに疲労消耗といったネガティブな面もある。男性器が勃起するのは陰茎海綿体に血液が充ちることによっておこるが、そこへ行く動脈は体内で最も細く(1-2ミリ)、動脈硬化の兆候が他部位に先駆けて早期に起こる。朝立ちがないのは男性ホルモン不足と並んで動脈硬化が起こっていて睡眠リズムが乱れレム睡眠が朝まで続かないためとみられている。糖尿病は末梢血管が侵される病気であり、進行すると勃起不全に陥る。
朝立ちはホルモンと睡眠を反映していて健康のバロメーターといえる。睡眠中に無意識下に勃起することがあるが、これは次項で述べるレム睡眠と関係がある。レムとは浅い睡眠であり夢を見ているときに相当し、一晩に4-5回御起こる。深い睡眠を非レム睡眠といい、睡眠はレムと非レムの交代で起こっている。朝、眼が覚めるのはレム睡眠のときで、この時は副交感神経が活動しており腸が刺激され同時に陰茎が勃起する。
 「最近あまり食べないね」とか「痩せてきたね」という食欲と違って、性欲減退は誰も注意してくれない。性欲は放っておくと衰えやすいものであり、自分で奮い立たせるしかない。性欲は健康の見えないバロメーターであり、その衰えは全般的な衰えの警報であるからである。

「朝勃ちがQOLをたかめる。熊本悦明 文春11月号」

 
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