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健康百話

2017-05-10
健康百話(63)インフォームドコンセント(IC)
長廻 紘

 いつのころからかお医者様がやさしくなって、患者の言うことをよく聞いてくださるようになった。おなじころ医者についていた「様」が移動して患者に付き、患者様の登場となった。病名から始まって治療方針までお医者様から一方的につたえられ、患者はそれを拝聴するだけだったものが、現今は医療のいろいろな面で医者患者間の双方向的交流が図られる時代である。それをインフォームドコンセントという。「説明と同意」と訳されている。インフォームとは英語informで知らせる、コンセントconsentは同意。情報を共有して良い知恵を出そうという考え方である。なお、電気器具のコード先端の差し込み部をコンセントというが和製英語で語源は不明、かつICとも関係はない。
まず医者が患者に診断や治療について具体的に分かりやすいように説明し、分からなければそれに患者が質問するのは自由である。質問を繰り返し納得できてはじめて患者は同意する。患者が同意できない場合には医療機関を変えることになる。また同意したことを後から患者が撤回を求めることは可能である(同意撤回権)が、医者が一方的に変えるのは好ましくない。患者の医者を選ぶ権利、診療拒否権などとともに患者の立場を保証するものである。同意した事項を医者が実行するが、その結果が期待通りでなくても患者に責任を転嫁することはできない。医療の主体はあくまでも医療側にあり患者が同意したからといって悪結果を患者との共同責任にすることはできない。
医者は診療して分かったことを診療録(カルテ)に記載するが、それは誰が見ても理解できるものでなくてはならない。医者の独りよがりの、また意味不明のことを書くのはルール違反である。なぜならカルテは求められれば開示しなければならないからである。ICの基本的な考えは情報開示である。医療の内容に関して、例えば医療費など、患者側が納得できない場合にも質問することは自由である。1997年から、診療報酬請求明細書(レセプト)の内容が原則として開示されることになった。為されていない医療行為とか処方されていない薬などについて問題提起するのは患者側の自由である。
以上記したことどもは契約では常識的なことだと思うが、過去において医者患者関係はあまりにも医者主体的であっで、それに異を唱えるようなICは医者側の抵抗感も大きかったが段々世の趨勢に押されて、医者と患者は契約に基づいた対等の関係であるという考え方が、普通になっている。その方が医者にとっても結局は良い、気が楽になる、ことが分かってきたからである。
これに関連して付記しておきたいことは、医療は治す一辺倒でなく、治る見込みが乏しい患者に医者が一方的に治療に走ることに対して疑義がもたれるようになってきている。高齢者が食べられなくなっているのに点滴で水分を補給したり(多くの場合浮腫を増すだけ)極端な場合には胃瘻を造ったりということは徒に認知症者などの苦しみを長引かすだけである。悪く勘ぐれば患者が生きていなければ医者の収入にならない。長引くだけでなく結局治癒につながらないことが分かってきた。高齢というものは治ることのない病気であるという、高齢症候群という考え方が広がってきている。

 
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