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健康百話

2017-01-17
健康百話(59)暴走老人
長廻 紘

 脳は加齢とともに生理的に萎縮しやすいが、とくに糖尿病、うつ、喫煙・アルコール・食べすぎ・運動不足などの脳の動脈硬化を促進する生活習慣が長年続くと脳の萎縮に促進的に作用します。大脳のうちで性格、思考、感情、理性などを司る前頭葉は早い段階から変化しやすく、前頭葉の機能低下によって1.感情抑制機能の低下。理性のタガが外れやすい。2.判断力の低下、旨い話やオレおれ詐欺にのせられやすい。3.意欲の低下。4.性格の先鋭化。もともと持っている性格が、抑制が取れてより端的に先鋭化、といった現象が見られようになります。ある意味で認知症の前駆的状態ともいえます。前頭葉の機能低下によって、今日の日付を答えた後に誕生日を聞かれると同じ日付を言う保続(一度示した反応を状況が変わっても続けてしまう現象)などといったことが起こります。
最近、社会脳という考え方が注目されています。これは人と上手くやってゆくための社会的能力を支える脳の機能のことで、たとえば表情から相手の気持ちを読む、皮肉から悪意をくみ取るなどといったことです。社会脳は特定の部位が支えているのではなく、いくつかの部位がネットワークを形成することに依って働く機能です。社会脳には未解明の部分が多いが、米国では認知症の診断基準にも取り入れられています。
使わないと衰えるのは脳と身体他部との間で差がありません。脳は再生することはないがが、損なわれた部分の機能を他の部分が代償するという機能はあります。脳の老化現象に個人差があるのは肉体の他部と同じようにこの代償機能の差によるものです。教育暦が長い、活動的な生活を送る生活習慣病の無い人において高い代償作用は大きく、暴走に歯止めをかけます(週刊東洋経済16.3.19)。
身体と共に精神のほうもバランスを失ってゆくのが高齢者です。うつと暴言などが目立つものです。高齢者の横暴、目に余る言動が目立ってきて、暴走老人という新語までできています。基本にあるのは「自分勝手」な言動、行動をしているのに、それに気づかない事で、駅員、病院職員、店員など職責上あまり強く出ることが出来ない立場にある弱者と見える人に対して理不尽に振舞う。たとえば夜電車を乗り過ごして帰れなくなった乗客がタクシー代を、果てはホテル代を出せという。駅員が断ると罵詈雑言を浴びせる、ときには暴力を振るうに至る。こういう行為は高齢者に圧倒的に多いという。高齢者は病院などではいたわってもらうのが当たり前という前提で行動する者が少なくありません。近所に施設たとえば保育所、幼稚園などができると聞くと、うるさくなる送迎車で道が混むなどと言って反対に立ち上がる。保育所が社会的に必要な施設であることが分かっていても、それより自分にかかる迷惑度を優先する。社会の一員という意識が薄い、全体の一部であるという感覚がマヒしてくる。
 高齢期は退職、肉体の衰え、配偶者の死などといった喪失体験の連続である。心理学的には喪失感と攻撃性は、大事なものを奪われたり壊された時に感じる怒りとおなじようにコインの裏表のような密接な関係にあります。

 
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