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健康百話

2016-11-22
健康百話(55)食事の介護 口腔ケア
長廻 紘

 高齢者では嚥下筋の衰弱も起こるので、食べ物を噛む力も弱ります(十分咀嚼ができない)。サルコペニアの重大な現れが咀嚼筋の弱りで、咀嚼が思うようにいかなくなり栄養状態の悪化につながります。どんなに立派な食事であってもそれが口を通らなければ画に描いた餅です。嚥下能力を勘案して食事を提供しなければなりません。高齢者では口を開けて噛む能力が低下しています。老年症候群の立派な一項として咀嚼不全があります。加齢に伴って自分の歯が減る、あごの力が減弱するなどの理由によって食事が十分にできなくなります。そのことが因となって衰弱が一層深まってきます。認知症の人では中枢の機能が低下しているので飲み込むとき気管の入り口の蓋・喉頭蓋が上手く閉まらないで食物が気管に入ってしまい、いわゆる誤嚥性肺炎につながります。
食事の形態が通常、ミンチ、ソフト、ムースから液状と嚥下機能低下に対応した食べやすい食事に進むことが重要です。
食物は単純に体内へ入ればよいというものではありません。自然な方法で入るのが身体にとっても精神にとってもとても大事なことです。食べるとき、足裏が床につき、骨盤が立ちかつ「前かがみ」である姿勢は重力と閉口筋が協調的に働き、咀嚼や飲み込みが楽にできます。背もたれのある椅子に座って食べると前傾姿勢は取りづらくなります。逆に背もたれがないと自然に前かがみになります。普段食べている姿勢を思い出せば十分納得のいくところでしょう。
口に入れた食物をよく噛んでゴクンと飲み込むのは、飲み物を飲むのとはまた違った、人体にとっての重要性があります。咀嚼に伴って出る唾液には消化酵素としての働きのほかに、細菌の増殖を抑える抗菌、汚れを洗い流す自浄作用、口腔内のpHを元に戻す緩衝作用などがあります。咀嚼に伴って内臓が目覚め、やがて送られてくる食物への消化待機態勢に入るといわれています。
介護士の重要な仕事に食事介助があります。嚥下障害者の介助をするとき急ぐことは禁物です。少しずつ慎重に食べ物を口の中に運ばなければなりません。喉の奥に食物が残っていないことを必ず確かめてから次の一口を運びます。
食事介助の基本は1.横に座って同じ目線で介助する。上から介助してはいけない。被介助者が見上げるようになり顎が上がって誤嚥の原因になる 3.ゴックンを確認する 4.むやみに話しかけない 5.眼をさまさせる。ウトウトした状態で食べさせると誤嚥を起こしやすい 6.相手の食べるペースを理解して合わせる 7.食後1時間は起きているようにします。嚥下障害のある人では、飲み込んだつもりでも咽頭残留と言って食べたものが喉に残っていたり、食物が気管や肺に入る誤嚥を起こしやすくなります。食べる嚥下機能が十分であることは嗽(うがい)を見ることによって評価できます。ガラガラといううがいは簡単そうに見えて複雑な喉の動きであり、それが十分にできれば、食べる機能に問題ないと判定できます。口腔内をよく観察することは咀嚼能力の評価に重要なことです。歯は虫歯などで減少しながいあいだに噛合せて不十分になります。揃い具合を見る。唇や頬の動きは咀嚼や嚥下に深く関わりがあります。頬や唇の動きに障害があると食べこぼしが多くよだれが垂れるなどが起こります。また頬を動かすことで食べ物はスムースに喉の奥へ送り込まれます。

 
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