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健康百話

2016-07-04
健康百話(48)認知症の特徴
長廻 紘

人類が二本足で直立歩行するようになったことがすべての始まりで、続く人間界の様々な出来事はすべて自由になった手がリードした、といって過言ではありません。サルの手から時間をかけて現代人のような手に進化していきました。やがて今から1万年前、先進地域で農耕が可能になり、それは食料を集めるのではなく生産する、すなわち一日中動きまわってやっと食っていけていたのに少し余裕が、食うこと以外のことも考える余裕もできたことを意味します。道具を作ったり(人間の定義の一つに道具をつくるがある)、それによって余ったエネルギーが脳の成長に向かい、脳が言語や文化を生みました。よいことばかりではありません。あまりにも急速に文化が進み身体の進化を遥かに超えてしまいました。新しい状況に脳がストライキを起こしたのが認知症といえます。
認知が心の高度な部分とすれば、感情・情動や気分はそれと異なる、より原初的な心の現象です。この部分は残されているので、認知症患者は心理学的には立派な人間です。人間的な感情は外面に現れた諸症状からは想像できないほど、たっぷり残っているものです(小澤勲『痴呆を生きるということ』)。認知症の人はいろいろ訳の分からないことをしたり言ったりするので、周りにいる人はそれに振り回されます。だが、彼らは彼らなりに理由があって言っているので「そうではない」と反論しないで、よく聞いてあげることが肝要である。よく知られているのが「物とられ妄想」。なにかが無くなった、盗まれたと言っている場合、頭から否定することなく、なくなった前提で話を進めることが肝要である。介護の大原則:認知症の人の世界を理解し、その世界を尊重する。
アルツハイマー型認知症は、脳におけるタンパク質異常(アミロイドβの沈着およびタウの絡みつき)によって起こります。PETで調べると、まず海馬(記憶に深くかかわる)にタウが貯まり、その後アミロイドが大脳にたまりはじめ、その範囲がだんだん広がってやがて高度な脳の機能を司る大脳新皮質へと拡大し認知症の発症に至ります。この異常を抑える手段はない、すなわち治療や予防はいまのところ困難です。たんぱく質異常は発症の20年前から始まると言われています。無症状期がやたらと、癌以上に長い病気です。
自分のことは自分で判断し護るのが人生ではないでしょうか。認知能力(知性)が障害されると下記のような不都合が生じてきます。認知症の主要な症状として、記憶、見当識、思考などの障害と言葉や数のような抽象的能力の障害がある。付随的な症状として幻覚妄想、不眠、抑うつ、不安焦燥などの精神的なものと徘徊などの行動障害などがある。認知症は3期に分けられる。初期(健忘期)は記憶障害が中心である。中期(混乱期)は時間空間の見当識障害が明白になる。自分のいる場所が分からなくなり徘徊したりする。末期(寝たきり期)には、歩行障害、失禁、嚥下障害などの身体的不調が中心。
老年を生きることは辛いが、そのうえに痴呆症が加わったときの苦しみは想像を絶する。しかし、当人にはそういった意識はありません。介護の原則は、認知症の人の作っている世界を、たとえ妄想にみちているとしても極力理解し大切にする。すなわち妄想世界と現実のギャップを感じさせないようにする。

 
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