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健康百話

2016-04-14
健康百話(43)病気は変わる
長廻 紘

生命あるものの特徴は変わる、新陳代謝によって変わる、というところにあります。無生物も年月を経ると、石が崩れて行くように変わると言えば変わりますがそれは他から影響を受けて変わるのです。病気は生きているものに必然する現象ですから、とうぜん変わります。肉体の生理的機能が侵され、正常に働かない状態を病気といいます。病気は原因(病因)と個体の相互作用に基づくものです。原因は外部、内部あるいは両者の複合にあります。外部に原因がある場合たとえば細菌感染は、原因を取り除くすなわち環境改良か、抗生物質で菌を殺すことによって治すことができます。内あるいは内外両者に因がある場合、事はそう簡単ではありません。病「気」は中国で作られた言葉ですが、気に古代中国人の深い叡知が感じられます。英語のdiseaseには気の気配はなく、疾病に過ぎません。疾病は肉体だけを問題にした言葉で、病気は肉体とともに精神も問題にした言葉です。やまいは気からに見るように病気の多くはこころも巻き込んでいます。当然、病気は時代とともに変わります。
人類の歴史はさまざまな苦の発見とその解決の歴史ともいえます。病気という苦に対しては生活習慣の改善と診断・治療の向上によって解決への努力がなされてきた。すべての病気はいつでもどこでもあるが、また、ある場所、時代に特徴的でもあります。感染症に明らかなように、病気にもそれ自身の歴史すなわち消長があります。産業革命によって都会に集まり劣悪な住環境に押し込められた若年労働者の増加が結核の猖獗をもたらしました。その事に気づいた衛生学者たちによる環境改善の努力が、抗結核薬と並んで結核の減少をもたらしました。
人間の対策ばかりでなく病原微生物自身も変わりました。微生物も生きて行かなければならないので、食料である宿主を滅ぼしては元も子もない。弱毒化して共生の道を選ぶのが賢明です。人間は相手が弱まるのを待ってばかりはいませんでした、戦ってきました。難敵に次々と打ち勝ってきたように見える人類であるが、相手も負けてばかりはいない。抗生物質に負けないいわゆる耐性菌が大きな問題として浮上しています。すべての病気が治せるようになっても最後までと言うか、決して直らないのは感染症という説があることを付記します。原因である微生物がインフルエンザヴィールスに見るように変貌を遂げ続けるからです。
癌も病気である以上とうぜん変わる、現に変わりました。癌が変わったという意味は1.癌自体が変わった面と、2.癌に対する人々の考え方が変わった面と二つがある。1.に関しては人口の高齢化、生活習慣の西欧化および環境の変化(大気汚染など)によって癌の発生しやすい臓器(好発部位)がかわった。たとえば日本では胃癌が減り大腸癌、肺癌や乳癌が増えた。発生率が高くなりました。2.に関しては、癌は不可解な病気でした。死とほぼ等しい、すなわち癌という言葉を発せられるだけで、人が怖れ理性を失ってしまう時代が長く続きました。それが現在では原因と対策の分かった、了解可能な病気である。それにともなって対処することが可能になりました。

 
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