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健康百話

2016-02-26
健康百話(40)鏡としての癌
長廻 紘

 努力して立派な人間(仏)になりなさい、という仏教はよく分かる。ただ誰も実行していないだけである。だが、父である神、子であるキリスト、神の息吹である聖霊の三つは同じである(三位一体説)というキリスト教はさっぱりわからない。「人間はキリストの出現とともに始まる。キリストの出現とともにわれわれの歴史を変えた新しい事実は、人間キリストが神の子だと主張したことでなく、神キリストが人の子だと主張したことである。人間を創造することによってキリストはあらゆる人を全人類と同じように非常に広くて深い永遠のものとした(マダリアーガ『薔薇と十字架』)。神の姿に似せてつくられた人間が、人間の姿に似せてつくったのが神である。こんな教えを分かろうとすること自体が日本人には無理筋である。ただ信じなさいという答えがちゃんと用意されてはいるけれども。
人間とその生活と癌は同じものであるという現代の三位一体説。野生動物に癌がないように、もともと人類に癌など少ないはずです。癌は大きな目で見ると、二本足で立つ、定住農耕生活、火の使用と調理など人類進化が進化したことのつけといえます。欲しいものはなんでも手にいれたいという欲が度を過ごし癌の時代を迎えるに至ったといえます。欲はつねに充足をもとめ、しかも充足によって満足に到ることはありません。生きてゆくのに必要以上のものを集める文明社会の負の側面、光としての文明の影の部分が癌として育ちます。胃腸の欲望という美食と喫煙などの肺の欲望が人を癌に誘い込みました。日本人に多い癌の原因の疫学的な研究が進んでいます。影を生む光、波をおこす風の研究といえます。禁煙、節酒、減塩、適度な運動、適切な体重の維持の五つの生活習慣を一つ実践するごとに、癌のリスクが平均して1割減るという報告がなされました。この五つは等価ではなく、禁煙が最も効果的であるのは衆目の認めるところです。次いで減塩。減塩は癌だけではなく、高血圧予防を通じて脳卒中予防にもつながる。
ドンキホーテ(DQ)とハムレットは文学に表れた代表的な人間類型といわれています。さて、このどちらが癌になりやすいのでしょうか。ハムレットは美食していただろうし、王族であるから社会的軋轢というストレスの真っただ中にある、「立派な国の望みでも飾りでもあったのに、流行の鏡、作法の典型(オフェーリア)」。眼のあるお方の眼に止まるお方であったから、癌になるとしたらこちらでしょう。DQは貧しく、社会から無視に近い扱いを受けていた(彼には現実の社会が無かった)、したがってその生活は砂漠の中を一人で歩くようなもので、自分の周りに社会を生み出し自分の創造した怪物や怪人で充たし数々の奇行を行ない、その砂漠を生きるしかなかった。第三者から見ればストレスの塊のようなDQであるが、彼自身は何のストレスも感じていない。だから癌とは縁遠いお方と思えます。
わたしなら癌になるとしてもハムレットのように生きたく思います。ドンキホーテは癌にならないかもしれないが他のありとあらゆる病気になってもおかしくありません。読んでいないのでどんな死に方をしたか知りませんが。

 
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