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健康百話

2015-06-18
健康百話(22)遺伝子と環境
長廻 紘

 病気とはなんらかの条件(外的とは限らない)によって陥った非生理的な身体や精神の状態をいいます。病気は遺伝と環境の複雑な相互作用によって起こります。環境が圧倒的な要素であるのが感染症などの外因性疾患であり、遺伝子異常が圧倒的なものは大腸ポリポーシスなどのように生まれつき発病が条件づけられた遺伝性疾患です。生活習慣病である糖尿病や高血圧は遺伝素因のある人に多いが、同じ程度の遺伝子異常があっても環境次第で発症することもしないこともある。ここにも、古来ある氏か育ちかと同じような問題がある。
遺伝子の突然変異は、偶然のできごととして一定の率で起こります。変異自体はその生物種にとって特に有利なものでも不利なものでもなく、置かれた環境の影響で有利となったり不利となったりあるいは中立であったりするだけです。進化は遠い将来を見据えて起こるものではなく、目の前の環境への適応のために起こるので、起こった変異のうちで有利なものが選択されて残る結果となります。有名なのはビタミンC 合成酵素と壊血病の関係です。人類は進化のある段階で突然変異の結果ビタミンC 合成酵素が出来なくなりました。森に棲んで果物などの食物からビタミンCを豊富に摂取できるときはその酵素が無くても問題なく、生存に関係ありませんでした。人の先祖が森から出て新鮮な植物が得難い環境におかれると、たとえば船乗り、ビタミンCの摂取不足からくる壊血病に悩まされるようになりました。この段階で不利な突然変異ということになるが、ビタミンCが発見されそれを含む食物を摂取することによって不利から回復できました。有利であった変異も後に環境の変化の結果、不利になる事もある。ある環境において不利な遺伝子も別な面で有利なこともあり、なくなってしまうことはない。たとえば鎌型赤血球症という重症貧血の原因遺伝子を持つグループが滅亡しないのは、その遺伝子がマラリア抵抗性を持つから。
また、病気は矛と盾の関係の変化、攻撃側すなわち病因と防御側すなわち人間の力関係によって起こります。防御側の代表選手が免疫機構である。免疫とは前に述べたように自己と他(非自己)を区別し他を排除しようとする仕組みのことです。免疫能が低下すると、外から来る病原菌に対する抵抗力が減少するし、体内に存在する病原性の少ない微生物の活動が活発化し病気を起こしてしまうことになる。院内感染とかエイズのときの各種の感染症である。攻撃側である微生物も、インフルエンザが年ごとに変異して姿を変えて人間に襲い掛かってくるように、変わります。抗生物質に対する耐性菌も似たようなことで、抗生物質は病原菌を殺し病気を治すが、病原菌も黙ってはいないで姿を変えて再び襲ってきます。抗生物質が効かない耐性菌のことである。最近問題になっているのは畜産分野で家畜の成長を促進するために抗生物質が使われるが、そこで生じた抗生物質耐性遺伝子が食肉を通して人に入ってくることである。
微生物との戦いは人に不利である。それは世代交代の時間と変異の速度に著しい差があるからである。大腸菌は条件さえよければ20分に一回分裂するが人間の1世代は30年である。

 
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