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健康百話

2015-04-27
健康百話(16)ストレッチ2.内臓筋
長廻 紘

 前回、随意筋である骨格筋を意識的に伸ばすストレッチについて述べました。今度は内臓の筋肉を伸ばすことについてです。胃腸の筋肉は不随意筋であるので直接動かすことはできません。周囲から力を加えることによって間接的に屈伸させる静坐が良いと思います。坐って背筋をまっすぐに伸ばした姿勢で呼吸を調え心を静かにすることを静坐といいます。
正坐位で両足を重ねた上に胴体を乗せやや前傾気味に伸ばします。重心を下腹部(臍下丹田)に安定させ、臀部を後ろへ突き出すようにして、背筋を伸ばします。その姿勢で静かで深い腹式呼吸を30~60分ほど続けます。短い吸気とそれにひきつづく長い呼気。息を吐き横隔膜を下げながら気海(臍下)丹田に力と精神を集中します。それによって腸などの内臓が下方に押し込まれます。それによって副交感神経系が刺激され、血行がよくなり、消化管の動きがよくなります。静坐の特徴は、呼気時に内臓を下腹部に押すように息を吐くことです。したがって、坐らなくても、たとえば椅子に浅く腰かけて上半身を伸ばした姿勢で腹式呼吸をすればその効果は坐った静坐と同じです。立っている時、歩いている時(歩行禅)も意識的な腹式呼吸をすれば、同じ効果が得られます。
呼吸は寝ているときにも休みなく行われています。ということは呼吸は不随意運動なわけですが、また意識的に回数や深さを調整することが可能です。深吸気は宇宙のエッセンスを腹の底まで吸い込む(宇宙を呑む)ことを意識させ、それを意のままに吐くのは呼吸の質を高めることで生気を統御し、生き方の質をも高めます。意識的になされる呼吸は身体と心を密接不離につなぎます。呼吸を意識的に行い、それを身心に影響させようとすることを調身、調息、調心といいます。
激しい動きをともなったスポーツやフラメンコなどの舞踏が効果的に遂行されるには、身体と心をつなぐ呼吸の統一が不可欠です。調身は腰・腹が安定し背筋が伸びた姿勢、調息は呼気の調節です。安定した姿勢で空気を短く吸いゆっくり吐く腹式呼吸によって心の安定(調心)がえられます。緊張や精神的な動揺が呼吸を不規則に、時には止めたりもするのは日常的に経験する所です。
 魚(にかぎらず動物)は内臓から腐るといわれます。われわれは鍛えるというとすぐ手足の筋肉を思い浮かべますが、本当に鍛えるべきは宇宙と感応している内臓です。「手足」という言葉にみるように、手や足は脳や内臓がちゃんと働くための奴隷にすぎません。運動選手が決して長命ではありません。あまり動くことなく、お経をあげることによって調身、調息、調心を実行しているお坊さんが健康長寿を保っています。内臓あっての手足で、決して逆ではないことを忘れてはいけません。ストレッチも骨格筋だけに偏っては片手落ちです。骨格筋と内臓筋の双方を伸ばし鍛えて初めて万全の効果が、いついかなるときにも思ったように身体が動き、頭脳が働き、精神がなにものにも柔軟に対処することが期待できます。老いても伸縮自在な人間、ストレッチ人間。

 
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