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健康百話

2015-04-01
健康百話(14)内視鏡―-癌はなぜ治るようになったか
長廻 紘

 20世紀の中ごろになって始めて、病気が確実に治るようになったといわれています。それまでも病気は治っていたのではないか、という意見もありますが、それは勝手に治っていたのです。医者の仕事は自然治癒を助ける、方向づけすることに在りました。そうであるから、昔の医者は人間のこと、病気のことがよく分かっていなければ務まらなかったのでしょう。だが、基本的には治るも治らぬも風次第。
病気が治せるようになったひとつの原因は言うまでもなくペニシリンに代表される抗生物質の発見です。それまで人類最大の敵とさえ言われてきた感染症が治せるようになったのです。もちろん耐性菌などといった新しい問題が次々と出てきたのは言うまでもありません。もう一つは内視鏡です。癌はまったく歯が立たない病気でした。見つかるのは、乳がんなどの例外はあるが、身体の外から触れて(触診)分かるような大きな進行癌だけで、そんなものが治せるわけはなかったのです。1960年代の学生実習はベットサイドで患者のお腹を触って癌の診断をつけていました。そのうえ、癌がどうして出来る病気なのか見当もつかなかったからますます取りつく島は在りませんでした。相手が分からないのに対処できるわけはないのです。
内視鏡は分かり易く言えば、身体の中へ入って行って、外からわからない部分を調べる検査法です。内視鏡ができる以前には、体の中は口を開けて見える範囲しか見えなかったのです。だから、外から触っていただけの従来の方法と内視鏡とは雲泥の差があるのす。目を閉じてなにかを当てるのと、目を開けて当てるぐらいの差があると言えます。
内視鏡は長い歴史を持つ検査法ですが、特殊な人の特殊技術に止まっていたのです。東大の宇治らが1950年代末に開発した胃カメラが始めて確実性のあるものとして登場し、小さな胃癌、早期胃癌がたくさん診断されるようになり、胃癌大国の日本人に圧倒的な歓迎で迎え入れられました。その後急速に発展し、いまでは診断のみならず治療などにも広く用いられています。胃腸などの消化管に限らず身体中のあらゆる臓器に用いられています。
内視鏡で小さながんが見つかるようになり、外科的に切除するという治療が可能になりました。大きな癌は手術的に切除しても高率に再発したものです。また、早期癌から生検やポリペクトミーで採取された組織を顕微鏡で見ると、大きな隔たりがあると思われていた癌細胞と正常細胞との間は連続したものであることも分かってきました。小さな癌の癌細胞は正常細胞に似た部分があると分かりました。すなわち形態的にも分子生物学的にも正常細胞と癌細胞はつながりがある、癌は正常細胞が連続的に変異してできると分かってきたのです。
内視鏡に始まって、その後、身体の奥の隅々まで手に取るように分かるCT,MRI,超音波などの検査法が開発されました。身体を切ることなく色々な治療器具が体内へ入って行きTV画像を見ながら治療を進めて行くことができるようになりました。それもこれも皆、内視鏡が先鞭をつけたのです。偉大なるかな、内視鏡。

 
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