HOME > フクシ情報広場

健康百話

2015-01-29
健康百話(9)転倒2
長廻 紘

 四足から二本足歩行に移った人類が得たものは手の自由と脳の肥大化。失ったものは身体の安定。二本足で歩くというが、歩行時に両足が地に着いていることはあまりなく、片方が地に着きもう片方は浮いている。歩行の一周期(足を上げて下すまで、あるいは歩行の始まりから終わりまで)の80%が片足支持期で、両足支持期は20%にすぎないという。すなわち歩いているとき身体を支えているのは多くの場合片足である。転倒の多くは片足立ちがちゃんと出来ないことによる。片足立ちの時、身体の安定性が損なわれやすいので、連続する次の動作にスムースに移れない。いそいで歩く、跨ぐなどの日常動作における片足立ちになる瞬間にバランスを崩して転んでしまう。
 転倒防止のためにいろいろな方法があると思うが、私が実行しているのは片足立ちである。転んでも怪我をしないマットの上などが善かろうが、そんなことを言っていては中々実行に至らない。どこでもよい、まず片足で立ってみる。ただし、転びそうになったらすぐ掴まれるものの近くでやる事。そうでないと練習が即、事故につながる。片足で立つとフラフラする。無理しないですぐ両足立ちに戻る。機会を捉えて頻繁に行っているうちに、だんだん片足で立てる時間が延び、フラフラ度も減少してくる。そうなったら、次は色々なことを片足で行うよう努める。毎日、朝TV体操を行っているが、そこでも上半身を動かす時は両足ではなく片足立ちで行うようにしている。一二年のうちに、自然に無理なく片足で安定的に立つことができるようになる。

 蛇は両生類から進化したから、元は足があった。蛇には昔あった足の骨が残っている。人間もこのまま足を軽視した道筋をたどれば蛇や鯨のようになる、のではなかろうか。足で立って歩く以上は、足を弱るに任せるわけにはいかない。腰から下が無ければ人間は軽い(骨の80%は足に在る)ので、逆立ちして手で移動できなくもないかもしれないが。人間は動物であり、動物として生きてゆくためには中(内臓)と下(足)が基本である。足は移動だけではなく、宇宙と人間を結ぶ。足の踵で大地とつながり宇宙の命を吸い込むという人間存在の基本的な部分である。足を粗末にするということは、実は身体全体を粗末にしていることである。足が四足獣より二本足りない分、努力がいる。
 足は肚とセット。足腰が安定し肚が坐って、生き生きとした力が身体内部より自然にわき出る。下等な人間ほど頭寒足熱ならぬ、上重下軽、頭を重んじ足を軽んず。頭が主(頭でっかち)で、地に根を下ろしたところがない、内から湧きだす生命力に欠ける。白隠禅師「至人は常に心気を下に充たし、庸流は常に心気を上に恣にする」。荘子「真人の息は踵でもってし、衆人の息は喉でもってする」。一流の芸人は足の裏から息を吸い、喉から吐くというイメージトレーニングをしている。足を意識し大事にしている(歩いて鍛える)と、大地と直結しているという安心感と、なにごとにも挫けない精神力が生じる。

 
バックナンバー
健康情報広場
健康百話
広報
▲このページの先頭へ