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健康百話

2015-01-29
健康百話(8)老人論――転倒1
長廻 紘

 私の母は90才近くなって、さしたる理由なく畳の上で転んで大腿骨を骨折してしまった。ほど遠からず、施設のお世話になるようになり数年のうちに亡くなった。不幸中の幸いは最後まで頭がしっかりしていたことであった。別に珍しくも何ともない話ではあるが、そこには老人ならではの3つの特徴がある。訳もなく転ぶ。転ぶと骨が折れる。それから目に見えて急速に弱ってくる。元気そうに見えていた人でも、転んで骨折してそれから急に本来的な老人に落ち着く(落ちぶれる)とはよく聞く話である。昔から言うではないですか、「老化は脚から(そして頭から)」と。
 人は誰でも転ぶときには転ぶが、老人は転ばなくても良いときにも転ぶところに問題がある。なぜ転ぶかというと、筋力が弱る、反射神経が鈍い、バランスが悪い。なにかがあるまでそのことに気づかないから、なにかが起こってしまう。老人に最も必要なのは「私は老人、肉体的弱者(にもかかわらずそれを認めたくない)」と頭の中に叩き込んでおくことである。厚生労働省の「13年人口動態統計」によると転倒転落がもとで亡くなった人は7766人に上るという。驚くなかれ交通事故死者(6060人)よりも多い。
 エラそうにこんなよく知られたことを改めて強調するのが本文の目的ではない。目的は対策、転倒予防方法である。転ばないためには、まず生活空間から転倒につながりそうな物をのぞく。床にビニールを置かない、濡らさない、転びそうな所には手すりをつける。環境が整ったら、次は自己点検。全身体のチェックは言うまでもない。持病の有無をみる。たとえば糖尿病。末梢の神経や血管に障害をもたらす。神経障害があると足裏の感覚が鈍くなる。網膜症では視力障害から失明に至り、転倒につながる。このように全身性疾患は足にも波及し思わぬ事故に至る。
 腰から下を足と言うが、足首(踝)までを脚、足首から先をとくに足ということがある。脚が弱ると人間は転びやすくなるが、その際足の下部はとくに重要である。歩くとき踵で着地し足先で地や床を蹴って先へ向かう。足先すなわち指が蹴りだしの原動力であり、その爪に力を与えるのが爪。足の先端に注意が肝要。足指が地面に接地していない浮き指は想像以上に多い(定義や年齢にもよるが日本人の半数近くに浮指がみられる)という報告(山下和彦他『転倒予防』)があります。蹴りだしが十分できなかったり、摺り足になったりして歩行中の動作が小さくなり歩幅が狭くなる、すなわち転倒の大きな原因になる。手指における「グーチョキパー」とおなじような足指ジャンケン、タオルつかみなどが足(指)の強化に有効です。
どうしても転びそうになる人とその家族は専門家に相談するのがベスト。 インターネットでは東京消防庁の「stop!高齢者の『転ぶ』事故(http//www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/stop/old _02.pdf)」を参照されるとよいでしょう。同庁による転倒の定義は「同一平面上でバランスを失い倒れて受傷したもの」。突き転ばされるのは転倒ではない。自分で勝手に転ぶのを転倒。

 
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