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健康百話

2014-09-29
健康百話(5)癌と免疫
長廻 紘

 誰も数えてはいないが、人間の身体は60兆個の細胞からなると言われている。そんなにたくさんの細胞のどれもが理論上は癌化する可能性を秘めている。そう考えると癌になることが当たり前で罹らないのは奇蹟にすら思える。癌は遺伝子が変異を繰り返してできる、生きる仕組みそのものの病気です。生きる仕組みとは、細胞が働きにおいても増減においてもちゃんとコントロールされていることで、細胞は遺伝子の命令で勝手に行動しないようにできている。増えたり減ったりもそのうちである。細胞が無制限に増える病態が癌。
そうであるから生きれば生きるほど、すなわち高齢になればなるほど癌になりやすい。ただ、高齢者の癌はゆっくり育ち、出来ても気づかれにくい。
生物の最小単位は細胞です。細胞の中にあって、生物を生物たらしめるのが遺伝子。遺伝子に傷がつくことが細胞癌化のスタート。通常、遺伝子の傷は修復されるが、その修復がうまくいかないと癌化は始まり、一つや二つの傷では癌にならず打ち続ける(ヒット)ことが癌を生みます。治療でも有効なヒットの連続が肝要です。
癌は正常の細胞Sが変異してできます。多段階発癌説によると、正常細胞(S)は一歩一歩癌(G)に近づき、S→S´→S´´を経て、遂に正常より癌により近いG´´→G´を経て正真正銘の癌・Gになる。変異の第一歩を踏み出した細胞S´は限りなく正常に近い、というより正常の範囲内であろう。当然、免疫の対象となる非自己ではない。
おなじ癌でも、生物学的と臨床的に分けて考えることができます。早期癌は内外中間の中間であり、免疫の手には負えないが手術などで助けることが可能です。生物学的にはS´も立派な癌であるが、臨床的には癌ではない。癌にも中間期がある。このS→S´→S´´を経て、遂に正常より癌により近いG´´→G´を経て正真正銘の癌・Gとなる。こういった経路のどの辺りで免疫系に非自己と認識されるのであろうか。それは分からないが、どこかが自己から非自己へのターニング・ポイントである。ターニング・ポイントを越えると立派な癌であり、免疫の対象になるが「羽翼すでになる」でボリューム的にもはや如何ともしがたく、通常の免疫の手に余るようになっている。免疫の対象になるのは量的に細胞レベルの話であろう。多段階にわたって変異するどの時点で癌と認識してよいか免疫細胞には判断しかね、癌は自己と非自己の境、いわば中間地点に位置します。
免疫細胞は癌細胞の周りにあつまるが、癌を異物として攻撃することはない。それを攻撃するように仕向けることができれば、癌治療は画期的に進歩するのは疑いない。各種の試みがなされ実用化も近いという。
癌は自己の細胞から生まれたものであるけれども対癌免疫は存在する(NK細胞)。だが、それが簡単には起こらないようになっています。どうも、癌は免疫の対象にはならないようにセットされているようです。それが癌の秘密と言えば言えるとおもいます。癌は免疫から限りなく逃走する。癌ができて育つためには予め免疫系となんらかの、たとえば見逃してくれといったような取決めを結んでいるのかもしれない。

 
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