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健康百話

2014-08-08
健康百話(2)免疫―敵のないものは脆い
長廻 紘
 

 生きていく上での重要事は外敵から守られることで、生体防御の中心にあるのが免疫系です。身体は四六時中、外からの危険にさらされています。第一次防御がヒフ・粘膜によって敵を体中へ入れないようにすること。中(特に血管内)へ入られてしまった時が緊急事態で免疫系の出番です。中へ入ってきた外敵から身を護る免疫系が働かないか負けるのが病気、免疫の働き過ぎが花粉症などのアレルギー。ちなみに自己に対して免疫が働くことがあり膠原病などの自己免疫系疾患といいます。
 免疫をやゝ専門的に定義すれば自己と非自己を識別し、非自己を排除し自己を守るしくみとなります。免疫系はリンパ球など多種類のそれぞれ役割を持った免役担当細胞の協調作用により機能します。外敵としての抗原が自己でない(非自己)ことを見破ることがスタートで、まずマクロファージが異物を貪食します。異物をとり込むとマクロファージという自己が非自己化し、それを攻撃する抗体が速やかに大量に産生され、抗原抗体反応によって抗原が分解処理・無害化されます。
 自己が無ければ非自己もない、すなわち敵を非自己と認識することはできません。それが免疫のポイントです。臓器移植が難しいのは他人(ドナー)の臓器は非自己であるので、もらう側に排除されるからです。 
癌は自己の細胞から生まれたもので対癌免疫は存在する(NK細胞)が、簡単には起こらないようになっています。自己の正常細胞が変異してできるのが癌細胞です。多段階にわたって変異するどの時点で癌と認識してよいか免疫細胞には判断しかね、したがって癌は自己と非自己の境、いわば中間地点に位置します。どうも、癌は免疫の対象にはならないようにセットされているようです。癌は免疫から限りなく逃走する。しかし、免疫機能の低下した免疫不全症の患者では癌の発生率は極めて高く、癌と免疫が無関係ということはありえない。
 動物は管(消化管、呼吸系、泌尿系など)を中心にできている、基本的に管(チューブ)として生きている。動物は胃腸のいわば付属物。人間も消化管という管を内腔とした巨大な管と考えることがでます。管は免疫学的に内か外か?強いて答えれば中間でしょう。消化管は外界のありとあらゆる汚れが集まる所ですが、管はそれら汚れを排除し切るのではなく、内部に受け入れて共存する寛容の仕組みと捉えることができます。管の内部には巧妙に外界が保存されています。外界は破壊してはならない。
『マクベス』の魔女「きれいはきたない。きたないはきれい」。現代の日本では、幼少時に(限らず)黴菌から遠ざけられたため却ってそれらに対する抵抗が弱まって困った事態が生じています。戦争経験が乏しく、免疫系が弱っているため、花粉症などのアレルギー性疾患が増えています。最近『寄生虫のいない病気』という本が評判になっています。清潔が過ぎて(細菌や寄生虫が居なくなり)却って病気になりやすい。いざ敵が来ると脆い。敵は完全に滅ぼしてはならない。第二次大戦で日独を叩きすぎたため、ソ連の強大化をもたらしアメリカは苦しんだ。第一次の後ドイツを傷めすぎたのが第二次の原因という説。

 
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