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健康百話

2012-09-07
長廻雑記帖(51)老人と水
長廻 紘
「通りゃんせ、とおりゃんせ ここはどこの細道じゃ
天神様の細道じゃ、御用のない者とおしゃせぬ
行はよいよい帰りは怖い、怖いながらも通りゃんせ通りゃんせ」


 血管は人の全身に張り巡らされて、所として至らざる所はない。心臓を出る太い血管・大動脈が次第に細くなり最後は毛細血管という極微細な網目状血管網となり、そこで血管と組織間でガス交換、物質交換が行われる。毛細血管までが動脈で、そこからが静脈。
 動脈は心臓の拍出力に乗って全身に、また重力の助けもあって足先まで素早く隈なく行き渡る。行きはヨイヨイである。ところが還ってくる方の静脈では心臓のような動力源もなく、立ったときの足に典型的なように重力に逆らう流れなので容易ではない。還りは怖いである。高齢者や病人にみられるように下肢にむくみ(浮腫)がきやすい。足は直立歩行するようになった人類の弱点で、多くの付(つけ)を負っている。
 血液が静脈を通って遅滞なく心臓へ還って行くように様々な工夫がこらされている。ふくらはぎの筋肉が収縮することによって下肢の静脈血を心臓の方へ送っている。歩行は下肢の血行を促進し、健康増進に資している。そのため脹脛の筋肉または静脈を第二の心臓と言う。また血液が静脈内で逆流しないように脈管内部に弁がある。高齢者で下肢に浮腫が生じやすいのは筋肉の働きが弱るからである。

 身体の中には下肢と同じように血液の流れがうっ滞しやすいところがある。頭と腹部内臓である。頭に血が上ると正常な思考が妨げられる。静坐は心を静かにし頭部の血流をよくする。腸管は狭い腹腔内に長大な管として閉じ込められてあるので、血液が停滞しやすく消化吸収作用を妨げる。腹部内臓を腹式呼吸によって圧迫し副交感神経を介して血流の促進を図るのが静坐である。静坐は臓器ではないが、機能的な第三の心臓といってもよい。
 地球は水の惑星と言われる。水に充ち溢れている。水は身体のあらゆる生理機能の中心に位する。例えば体温調節。体温が上がると体表に血液が多く流れ汗を通して熱放射を行い体温が下がる方向に働く。老人ではこの体温調節がよく機能しなくなる。暑い夏に熱中症で倒れる。水の流れが滞っているせいである。第二第三の心臓を常に活性化する努力が老化と戦う力を与えてくれる。老いた漁師サンチャゴは続く不漁にもめげず沖へ出続けた。そしてついに巨大なカジキマグロを釣り上げた。しかし、港へ帰る途中マグロはサメに食われてしまった。老人の努力は冷や水と言われる。冷でも水は水。老人は努力するから老人である。若人は、水にめぐまれているから何にもしなくても若人である。
 
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